- 総務省「令和7年版 情報通信白書」(2025年7月公表)によると、生成AIを使ったことがある個人の割合は日本26.7%。米国68.8%・ドイツ59.2%・中国81.2%と、世界とは大きな開きがあります。
- 企業でも差は歴然。生成AIの活用方針を策定している企業は日本49.7%に対し、米国84.8%・中国92.8%と9割前後。
- そして国内では会社の規模で差が出ています。方針策定は大企業 約56%/中小企業 約34%。
- 日本企業が足踏みする一番の理由は技術の難しさではなく「効果的な活用方法がわからない」——つまり“進め方”の問題です。
- 裏を返せば、利用が伸びている今は小回りの利く中小企業が差を詰めやすい局面。①1業務から小さく試す ②入力ルールを先に決める ③補助金・伴走支援を使うの3点から始めましょう。
「なんとなく遅れている気がする」を、数字で確かめる

「うちの会社、AIの活用って世間から遅れているのかな……」——そう感じたことはありませんか。ニュースでは毎日のように生成AIの話題が流れるのに、自分の周りではそこまで使われていない。その“肌感覚”が本当なのかどうか、公的なデータで確かめてみましょう。
手がかりになるのが、総務省が毎年まとめている「情報通信白書」です。2025年7月に公表された令和7年版では、日本と海外の生成AIの使われ方が国際比較で示されました。結論から言うと——肌感覚は、おおむね正しいのです。
総務省が毎年発行している、日本の通信・IT・デジタル分野の現状をまとめた公式の報告書です。国が調査した数字がもとになっているので、「なんとなくの印象」ではなく裏付けのあるデータとして使えます。
個人の利用率——日本26.7%、世界は6〜8割
まず、私たち一人ひとりの使い方から。白書によると、ChatGPTなどの生成AIを「使ったことがある」個人の割合は、日本で26.7%(2024年度調査)。4人に1人ほどです。前の年の調査(9.1%)からは大きく増えていますが、海外と並べると差がはっきりします。
中国は約8割、米国も約7割が「使ったことがある」と答えています。日本の26.7%は、主要国のなかで最も低い水準です。しかも国内では世代差も大きく、20代の44.7%に対し、60代は15.5%。身近に使っている人がいるかどうかで、体感が大きく変わる段階だと言えます。
企業になると、差はもっと開く

会社単位で見ると、差はさらにくっきりします。生成AIを「活用・利用する方針を策定している」企業の割合は——
| 国 | 活用方針を策定している企業の割合 |
|---|---|
| 日本 | 49.7% |
| 米国 | 84.8% |
| 中国 | 92.8% |
日本は約5割にとどまるのに対し、米国・中国は9割前後。「業務で生成AIを使っている」企業の割合で見ても、日本が55.2%なのに対し、中国95.8%・米国90.6%・ドイツ90.3%と、いずれも9割を超えています。
さらに、実際に何に使っているかも差が出ています。日本で最も多い用途は「メールや議事録、資料作成などの補助」で32.1%。同じ用途を米国では75.0%、中国では78.0%が使っており、身近な事務作業でさえ日本は2倍以上の開きがあるのです。
海外が進んでいるのは「特別なAI活用」ではありません。メール文の下書き・議事録の要約・資料のたたき台づくり——日本の会社でも毎日発生している仕事です。差がついているのは“難しいこと”ではなく、ふだんの仕事にどれだけ取り入れているかだと分かります。
本当の課題は「会社の規模」の差
日本のなかでも、もうひとつ見逃せない差があります。それが企業規模による格差です。生成AIの活用方針を策定している企業の割合は——
大企業が約56%に対し、中小企業は約34%。この「規模の差」こそ、多くの中小企業が肌で感じている遅れの正体です。人手も予算も限られるなかで、「何から手をつければいいか分からない」まま時間だけが過ぎている——そんな会社が少なくありません。
これは「方針を決めているか」の差であって、「規模が小さいと使えない」という意味ではありません。むしろ生成AIは、1人・数人の会社でも今日から無料で試せるツールです。決めていないだけで、始められないわけではない——ここが巻き返しの出発点になります。
なぜ動けない? 白書が示した“4つの壁”
白書では、日本企業が生成AIの導入をためらう理由(懸念)も挙げられています。多い順に整理すると、次の4つです。
- 壁1:効果的な活用方法がわからない最も多い懸念がこれ。技術が難しいのではなく、「自社の何に、どう使えば得なのか」が見えないという“進め方”の問題です。
- 壁2:社内情報の漏えいなどのセキュリティリスク「入力した情報が外に漏れないか」という不安。これは入力してよい情報の線引き(社内ルール)を先に決めれば、大きく減らせます。
- 壁3:ランニングコスト(使い続ける費用)「毎月お金がかかり続けるのでは」という心配。実際は無料または少額で始められる範囲が広く、まず無料の範囲で効果を見てから判断できます。
- 壁4:初期コスト(導入時の費用)「最初にまとまったお金が必要では」という不安。ここは後述の補助金が後押しになります。
注目したいのは、4つのうち技術そのものの難しさが理由になっていない点です。壁の正体は「やり方が分からない・不安がある」であり、いずれも“進め方”を整えれば越えられるものばかりです。
「遅れ」はむしろチャンス|今から巻き返す3つの着眼点

ここまで読むと落ち込んでしまうかもしれませんが、見方を変えれば今はまだ「伸びている途中」。全体が走り切ったあとではなく、差を詰めやすい局面です。しかも小回りの利く中小企業は、大企業のように稟議や調整に時間を取られず、思い立った翌日から試せる強みがあります。そのための着眼点は3つです。
着眼点1:身近な「1業務」から小さく試す
いきなり全社導入を目指す必要はありません。白書で海外が使っている用途と同じく、メールの下書き・議事録の要約・資料のたたき台など、毎日発生していて失敗しても痛くない仕事を1つ選んで試すのが近道です。効果を実感できれば、社内の納得も自然と広がります。
着眼点2:使う前に「入力ルール」を決める
最大級の不安であるセキュリティは、「何を入力してよくて、何はダメか」を先に決めるだけで大きく下がります。顧客の個人情報や未公開情報は入れない、といった数行のルールから始めれば十分。ルールがあるだけで、社員も安心して使えます。
着眼点3:補助金と“伴走してくれる相手”を使う
初期コストの壁には、国の補助金が使える場合があります。また「効果的な活用方法がわからない」という最大の壁は、自社の業務を一緒に見てくれる外部パートナーと組むのが手っ取り早い解決策です。ひとりで抱え込まず、“進め方”を一緒に描く相手を持つことが、遅れを取り戻す一番の近道になります。
入力ルールの作り方は「中小企業のための生成AI『社内ルール』の作り方」、費用の後押しは「デジタル化・AI導入補助金2026 かんたん解説」でくわしく解説しています。
まとめ|数字は「怖い話」ではなく「地図」
情報通信白書が映し出したのは、たしかに日本、とりわけ中小企業のAI活用が世界に遅れているという現実です。個人利用は日本26.7%対世界6〜8割、企業の方針策定は日本5割対米中9割、そして国内では大企業56%対中小34%——。
けれど、この数字は「もう手遅れ」を意味するものではありません。差の正体は技術の難しさではなく“進め方”。だからこそ、①1業務から小さく試す ②入力ルールを先に決める ③補助金・伴走支援を使うという当たり前の一歩で、着実に縮められます。数字は落ち込むための話ではなく、どこから動けばいいかを教えてくれる「地図」だと捉えてください。
「うちの業務だと、まず何から試すのがいい?」——その最初の一歩を一緒に描くのが、Office Nの役割です。中小企業・個人事業のリアルに寄りそって、無理のないAI活用をご提案します。まずはお気軽にご相談ください。
- 総務省「令和7年版 情報通信白書」個人におけるAI利用の現状 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd112210.html
- 総務省「令和7年版 情報通信白書」企業におけるAI利用の現状 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd112220.html
- 総務省「令和7年版 情報通信白書(概要)」(2025年7月) https://www.soumu.go.jp/main_content/001019264.pdf
※本記事の数値はすべて総務省「令和7年版 情報通信白書」(2025年7月公表)に基づく調査結果です。個人利用率は2024年度調査、企業規模別(大企業約56%/中小企業約34%)は概数です。調査の定義・対象年により数値は変わることがあります。最新・正確な内容は必ず総務省の公式資料でご確認ください。本記事は一般的な解説であり、個別の投資・法務判断を助言するものではありません。
