- 「検索で上位なのに、アクセスが減った」の正体は、AIによる概要(AI Overviews)かもしれません。 検索結果の一番上に、AIが作った要約が出るようになり、その要約を読んで“クリックせずに”検索を終える人が増えています(ゼロクリック)。
- 数字で見ると、影響は小さくありません。米Pewの調査では、AIの要約が出た検索でリンクがクリックされた割合は 15%→8%。Ahrefsの調査では、AIの概要が出る検索での検索1位ページのクリック率が世界で最大58%低下(日本でも約37.8%)。 日本の利用者調査でも「調べて終わり」の経験がある人は63.2%にのぼります。
- ただし、これは「順位を捨てろ」という話ではありません。AIの要約は、どこかのウェブページをもとに作られています。 “引用される中身”と“名前で思い出される力”を持つ会社は、これまでとは別のかたちで選ばれ続けます。
- 中小企業が今日から打てる手は、ほとんどお金がかかりません。結論を先に書く、一次情報(自社の事例・実名の実績)を出す、 FAQを整える、指名検索を増やす、検索以外の入口(GBP・メルマガ等)を持つ——この記事の後半で具体的に整理します。
「うちのホームページ、検索で上のほうに出ているはずなのに、最近アクセスが減ってきた気がする」。 2026年に入って、こう感じている中小企業の社長さんが増えています。順位を調べても、落ちていない。広告も止めていない。 それなのに、問い合わせの元になる訪問が、じわじわ減っている——。
その正体のひとつが、「AIによる概要(AI Overviews)」です。Google検索の一番上に、 AIが作った短い要約が出るようになりました。利用者は、その要約を読むだけで疑問が解けてしまい、 下のリンクをクリックせずに検索を終えることが増えています。これを「ゼロクリック検索」と呼びます。
この記事では、いま検索の世界で何が起きているのかを、公表されている調査データで確認し、 そのうえで中小企業が検索に依存しすぎずに“選ばれ続ける”ための打ち手を、静岡県長泉町のOffice Nが考察します。 数字はすべて出典を明記します。事実と、Office Nの見解(考察)は、はっきり分けてお伝えします。
いま検索で起きていること——「見て、クリックせず、去る」
これまでの検索は、単純でした。調べたいことを入力すると、青いリンクがずらりと並び、 気になったサイトをクリックして、そのページを読みに行く。私たちが何十年も慣れてきた流れです。
ところが、いまは検索結果の一番上に、AIが作った要約(AIによる概要)が表示されることがあります。 「◯◯とは、△△という意味で、ポイントは3つです」——そんな答えが、リンクを開く前に、その場に出てしまう。 結果として、「見て、分かって、クリックせずに去る」という行動が増えました。これが「ゼロクリック」です。
多くの中小企業にとって、ホームページへの入口の中心は「検索」です。チラシやSNSで知ってもらい、 最後にGoogleで検索してサイトに来てもらう——その「検索からの訪問」が減れば、問い合わせや来店のきっかけそのものが細ります。 順位が同じでも、です。まずは「何が、どのくらい起きているのか」を、データで冷静に見てみましょう。
データ①:AIの要約が出ると、クリックは約半分に(米・Pew)
まず、信頼性の高い調査から見ます。米国の調査機関Pew Research Centerは2025年7月、 実際の利用者 約900名の閲覧データ(2025年3月)を分析した結果を公表しました。 「アンケートでどう思うか」ではなく、実際にどう行動したかを追ったデータです。
- AIの要約が出た検索で、検索結果のリンクがクリックされた割合は8%。 AIの要約が出なかった検索では15%でした。およそ半分に減っています。
- AIの要約“の中”に貼られた出典リンクがクリックされた割合は、わずか1%。 「要約の中に出典があるから、そこから来てくれるはず」とは、なかなかいかないのが実態です。
- AIの要約が出たページでは、そのまま検索そのものを終えてしまう割合が26% (要約が出なかった時は16%)。「もう十分」と感じて、次を探さない人が増えています。
これは米国のデータですが、「AIが答えを先に出すと、人はサイトまで来なくなる」という傾向を、 実際の行動記録で示した点で重要です。日本でも、同じ方向の動きが起き始めています(後述します)。
データ②:検索1位でも、クリック率は下がっている(世界・日本)
「順位さえ良ければ大丈夫では?」——ここが、いちばん誤解されやすいところです。 SEOツールで知られるAhrefsは、30万件のキーワードについて、 Google Search Consoleの集計データ(2023年12月と直近の比較)を分析しました。分かったのは、次のことです。
- AIの概要が表示される検索では、検索1位のページであっても、クリック率(CTR)が低下している。
- その低下幅は、2025年4月時点で約34.5%。それが2025年12月には約58%まで拡大しました。 影響は、時間とともに大きくなっています。
- 日本市場についても、Ahrefsは約37.8%のクリック率低下を発表しています。 日本語のAIの概要がさらに広がれば、この数字はもっと大きくなる可能性があります。
これらは「相関」を示すデータです。「AIの概要が出る検索は、そもそも“答えが決まっている単純な質問”が多く、 もともとクリックされにくい」という側面もあります。AIの概要“だけ”がクリック減の唯一の原因だと、断定はできません。 ただ、「検索1位=安泰」という前提が、以前ほど強くなくなってきたことは、複数の調査が同じ方向を指しています。
データ③:日本の利用者も「調べて終わり」が増えている
「海外の話でしょう?」と思われるかもしれません。しかし、日本の利用者を対象にした調査でも、同じ兆候が出ています。 サイバーエージェントの調査(2026年1月に報道)によると、検索結果やAIの要約だけで検索を終える(ゼロクリック)ことが 「時々ある・頻繁にある・よくある」と答えた人の合計は、全体で63.2%にのぼりました。
さらに、10代では7割を超えるという結果も出ています。 若い世代ほど「わざわざサイトを開かず、その場の情報で済ませる」傾向が強いということです。 いまの10代・20代は、これから10年20年のお客様です。検索行動そのものが、世代交代とともに変わっていく—— そう捉えておく必要があります。
なぜ、中小企業ほどこの影響を受けやすいのか
ここまでのデータを、中小企業の目線でつなぎ直してみます。ゼロクリックの波は、実は会社の規模によって効き方が違います。
- 「〜とは」「料金の相場は」といった“答えが短い情報”ほど、AIに要約されやすい。 多くの中小企業サイトの集客記事は、まさにこの種の基本情報で書かれています。いちばん要約されやすい場所で戦っていることになりがちです。
- 大企業のような“ブランドの指名検索”が、まだ育っていない。 「◯◯(会社名)」で直接探してもらえる状態が弱いと、一般的なキーワードでの検索に頼ることになり、 そこがゼロクリックの直撃を受けます。
- 広告に大きな予算を割きにくい。検索からの“自然な訪問”が減った分を広告で埋める、という力業が使いにくいのも、中小企業の現実です。
つまり、「一般キーワードで上位を取る」という一本足の集客ほど、この変化に弱いということです。 だからこそ、打ち手も「順位を上げる」以外に軸を持つ必要があります。ここからが、この記事の本題です。
【考察】「順位を追う」から「拾われる・思い出される」へ
ここからは、Google等の公表データではなく、Office Nの見解(考察)です(事実と分けてお読みください)。
この状況は、悲観するための話ではありません。力を注ぐ場所を、少しずらす話だと考えています。 これまで多くの会社が「検索で1位を取る」ことに全力を注いできました。けれど、クリックが減る時代に効いてくるのは、 次の2つの力です。
- AIの要約に“引用される”力。AIの概要は、どこかのウェブページをもとに作られます。 「その分野で、はっきりした答えと、確かな根拠を持っているページ」は、要約の材料として拾われやすくなります。 拾われれば、たとえクリックされなくても、会社名や情報が“AIの答えの中に”載る可能性があります。
- 名前で“思い出される”力(指名検索)。「◯◯(会社名・店名)」で直接検索されると、 AIの一般的な要約には埋もれにくく、自社サイトが素直に表示されます。 一般キーワードの奪い合いより、「うちの名前で探してもらう」ほうが、これからは堅いとOffice Nは考えます。
リアルの商売に置き換えると、分かりやすいかもしれません。 通りすがりの一見客(一般キーワード)だけを追うのではなく、「あの店に行こう」と名前で来てくれる常連(指名検索)を増やす。 そして、専門家として名前が挙がる(引用される)会社になる。—— 検索の中身が変わっても、商売の本質は、そう遠くありません。
今日から打てる、お金をかけない5つの手
では、具体的に何をすればいいのか。費用をかけずに、今日から始められる順に、5つ整理します。 どれも「AIにも人にも、中身のある情報として伝わる」ことを狙っています。
- ① 結論・要点を、記事の“最初”に置く。「◯◯とは」「料金は」「手順は」の答えを、冒頭で言い切る。 だらだらした前置きをやめるだけで、AIにも読者にも「この記事は何に答えているか」が伝わりやすくなります。
- ② 一次情報と“実名の実績”を出す。自社の事例、実際の数字、現場の写真、担当者の名前。 よそからの受け売りでない情報こそが、これからの信頼(E-E-A-T=経験・専門性・権威性・信頼性)になります。ここは大企業にも真似できません。
- ③ FAQと構造化データで「意味」を伝える。お客様からよく聞かれる質問と答えをページに書く。 さらにFAQPageなどの構造化データ(Schema)を入れると、「これは何の情報か」を検索エンジンやAIにも正しく伝えられます (自社がAI検索に出ているかは無料で確認できます)。
- ④ 社名・店名で“探される状態”をつくる。指名検索は、AIの一般的な要約に埋もれにくい。 チラシ・名刺・SNS・口コミ・地域の活動で、まず名前を覚えてもらう。検索は「知った人が最後に確認する場所」と考えます。
- ⑤ 検索に依存しない“入口”を増やす。Googleビジネスプロフィール(地図)、メルマガ、LINE公式、既存客からの紹介。 検索“以外”からもお客様が来る道を持っておけば、検索の変化に一喜一憂せずにすみます。
5つとも、派手ではありません。けれど、「一般キーワードで1位を取る」という一本足から、 「引用される・思い出される・検索以外の入口を持つ」という複数の足へ—— その方向にゆっくり体重を移していくことが、AI検索時代の中小企業の、地に足のついた備えだとOffice Nは考えます。
まずは、Search Consoleで自社のクリック数の推移を確認するところから。 「なんとなく減った気がする」を、数字に変えるところが出発点です。
よくある質問(FAQ)
- Pew Research Center「Google users are less likely to click on links when an AI summary appears in the results」(2025年7月22日)
——米国成人 約900名の閲覧データ(2025年3月)/AI要約が出た検索でのリンククリック 8%(出ない時15%)/要約内の出典リンクのクリック 1%/
検索を終えた割合 26%(出ない時16%)/分析対象 Google検索 68,879件(うちAI要約 12,593件)
https://www.pewresearch.org/short-reads/2025/07/22/google-users-are-less-likely-to-click-on-links-when-an-ai-summary-appears-in-the-results/ - Ahrefs「AI Overviews Reduce Clicks by 34.5%」(2025年)/「Update: AI Overviews Reduce Clicks by 58%」(2025年12月更新)
——30万キーワード・Google Search Console・2023年12月比/AI概要が出る検索での1位ページのCTR低下 34.5%(2025年4月)→58%(2025年12月)/
日本市場 約37.8%(Ahrefsの国内発表による)
https://ahrefs.com/blog/ai-overviews-reduce-clicks-update/ - サイバーエージェント調査(Web担当者Forum 2026年1月5日 報道)
——検索結果やAIの要約だけで検索を終える経験(時々/頻繁に/よく)の合計 63.2%/10代は7割超
https://webtan.impress.co.jp/n/2026/01/05/51936 - Google 検索セントラル「AI features and your website」(AIの概要・AIモードとサイトの関係についてのGoogle公式解説)
https://developers.google.com/search/docs/appearance/ai-features
本文中の数値は、上記各機関が公表した調査結果です。Pewは米国、Ahrefsの58%は世界全体、37.8%は日本市場の値で、対象が異なります。 いずれも「AIの概要とクリック率の関係(相関)」を示すもので、AIの概要“だけ”がアクセス減の唯一の原因だと断定するものではありません。 影響の大きさは業種・キーワード・利用者層によって異なります。図はいずれも各調査の公表内容をもとにOffice Nが作成したもので、原典の図そのものではありません。 「【考察】」および「5つの手」はOffice Nの見解であり、効果を保証するものではありません。自社の実際の数字は、必ずSearch Console等でご確認ください。 各サービスの仕様・表示は今後変わる可能性があります。最新の内容は各公式ページでご確認ください。
